2004年03月19日

考えるプロが明かす「思考の生活習慣病」克服法

ロジカルに分析する時にも、アイデアを出す時にも人は常に「思考」している。今回紹介する書籍はその「思考」自体に着目した本。

考えるプロが明かす「思考の生活習慣病」克服法
船川 淳志 (著)

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著者は、企業人の間に蔓延する、考えることが出来ない、止まってしまうという「思考不全、思考停止」状態を指して、これは「思考の生活習慣病」ではないかと指摘する。その症状は4つに分類出来るという。


  1. 思考の放棄

  2. 「これだけの情報では無理ですよ」などと口にして、自ら考えることをやめてしまう

  3. 思考の依存

  4. 「だって、社長が言ってますよ」と人の頭に頼ってしまう

  5. 思考の歪み

  6. 推論の過程にムラや無理がある

  7. 思考の偏り

  8. 特定のことについては効果的に推論出来るが、ちょっと専門分野がそれると思考力が機能しなくなる

前者2つを「思考停止系」、後者2つを「思考不全系」と分類する。モノより知的付加価値が重要な時代になり、思考力の重要性は益々高まっている。こういった環境の変化がこの病気を顕在化させた。

著者がこの症状を指して「思考の生活習慣病」と名付けた理由は、以下の2点による。


  • 先に述べた4つの症状が「合併症」を引き起こしがちであること(複数の症状が併存する)

  • いわゆる「生活習慣病」と同じで、思考の習慣の点検による改善が可能であること

この病気は直せる=思考力は習慣で鍛えることが出来るという一貫した主張のもと、その方法が紹介される。

思考力の強化は次の3つのステップで行う。

【ステップ1】思考を活性化する7つの基礎習慣の実践
【ステップ2】2つのモード:クリエイティヴ思考クリティカル思考を鍛える
【ステップ3】3つの思考の基本動作(分ける、まとめる、置き換える)を実行

以下、簡単に紹介する。詳細は原著を確認頂きたい。

■ステップ1
7つの基礎習慣とは以下の通り。


  1. 頭の初期設定を変える習慣

  2. 考え抜けば答えは出る

  3. 一問一答の呪縛を解く習慣

  4. 1問10答、1問100問=正解は一つではない

  5. 両面思考の習慣

  6. 両面を見る=同じ物事のプラスとマイナスを見る

  7. ことばを研ぎ澄ます習慣

  8. 言葉の独り連想ゲーム=ことばの置き換え、言葉の因数分解を行う

  9. 思考を柔軟にする習慣

  10. 思考モードのシフト=スピードとしつこさ、拡散と絞り込み、抽象と具体性を意識的に選択する

  11. 見えない問題を考える習慣

  12. いつも心に氷山を=現象だけではなく、水面下にある問題を探る3つの質問(Why?, So what?, What if?)

  13. 自己認知力を高める習慣

  14. 汝自身を知れ=自分の思考の枠、色眼鏡を自覚せよ

これらは思考力強化の為の「習慣」であるので、逆の言い方に変えればこのような症状が多いということでもある。あるある、そうそう、と思わずにはいられないのではないだろうか。

■ステップ2
クリエイティブ思考=創造モード、クリティカル思考=検証モードを鍛えるのが第2ステップである。

この議論は、昨日紹介した「戦略「脳」を鍛える(2004/3/12)」の「知的シャドウボクシング」と基本的に同じものである。この両思考が重要な理由は、言うまでもなく、補完関係にあるからだ。右脳でクリエイティブに創り上げたものを、左脳でクリティカルに検証するのである。

■ステップ3
世の中には沢山の分析ツールや手法が紹介されているが、多くの人はこれを身につけることに苦労している。著者は、その原因の一つが上で述べた根本的な思考力の問題、もう一つは、提供する側である書き手と読み手双方の「幻想」があると分析する。

つまり、「たった一つの正しい手法」があるかのように幻想を抱かせたり、あるいは抱いたりしてしまい、その結果、使う側がいつまで経ってもビジネスの現場で効果的に考えながら仕事を進めるために必要な「スキルの全体像」を掴むことが出来ない。その結果、論理思考偏重になったり、何が何でも「ピラミッド」で分析してしまうような状況に陥るのだという。

実は、先日書いた「フレームワークの先(2004/3/15)」の前半は、類する問題意識を持って書いたものである。まさに同意。

当然であるが、思考が出来ても、ツールや手法が使えても、人を動かす、伝える、実行力がなければビジネスでは通用しないという点も抜け落ちがちであるように思う。(ちなみに、次の本はこの点に着目したものをチョイス予定)

ステップ3では、こういった現状を踏まえ、思考力を「使う」ための機能として(1)分ける、(2)まとめる、(3)置き換える、の3つを紹介している。


  1. 分ける

  2. ものごとを理解するためには分析から。その際に求められるのが「分別」。

  3. まとめる

  4. 分けたことを関連づけて整理する。

  5. 置き換える

  6. モデルに置き換える、数式に置き換える、図に置き換える。アナロジーやメタファを上手く使う。

最終章は、「思考」を組織の中でいかすための方法が語られる。なかなか興味深いのだが、本来は単独で本が書けるパートであり、ちょっと尻切れトンボ感もある。本論からは微妙に趣旨がはずれるので今回は割愛するが、この部分は今後独立した展開もあるように思えた。

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この本は右脳系・左脳系問わず、思考力を強化したい、なんとかしなければという問題意識のある人に特に有効ではないだろうか。自分がどの思考モードで考えているかを認識することで、その意味や効果は全く違ってくる。筋トレで言えば、今やっているトレーニングでどこの筋肉を鍛えようとしているのかを意識しなければいけない(効果が半減する)のと同じである。


ロジカルシンキングを行うにしても、マンダラートでアイデアを出すにしても、そのベースにある思考に問題があれば、やはりそこがボトルネックになる可能性は高い。具体的な技・ハウツー系の書籍を読む前に一度は目を通しておくと良いと思う。

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投稿者 thinkperson : 2004年03月19日 15:27 | 世界を広げる:トラックバック(0)


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